炎症 生体は、炎症反応により、体内に侵入した病原体や毒素が、局所から拡散しないようにする:生体は、体内に細菌が侵入したり、毒素が産生された時に、局所に炎症反応を起こし、血管透過性を亢進させ、白血球を、局所に浸出させ、血漿などの防御因子を、局所に漏出させ、血液凝固を促進させ、血管内を閉塞させ、局所の酸素濃度を低下させ、病原体の増殖を抑制したり、全身への毒素の拡散を予防する。
炎症は、本来は、生体の合目的的な防御反応だが、過剰な炎症反応は、生体の自己組織の損傷をも、もたらす。過剰な炎症反応は、痛みも増悪させる。
炎症では、熱感、発赤、疼痛、腫脹が見られる。これらの炎症の四徴は、生体が、患部で、PGE2などを産生し、患部の血流を増加さ� ��、治癒を促進させようとする反応である。
アラキドン酸やリノール酸など、不飽和脂肪酸の摂取が多いと、炎症物質(LTC4、D4、E4など)が過剰に産生され、組織損傷を増加させると、考えられる。
真皮表層で、肥満細胞から放出されたヒスタミンは、紅斑や発赤を形成させたり(血管を拡張させる)、浮腫を生じさせたり(血管透過性を亢進させる)、痒み感覚を惹起させる(痛覚を伝導するC線維を刺激する)。
炎症時には、肥満細胞などから放出される化学伝達物質(ヒスタミンなど)により、血管の拡張(局所の血流が増加し発赤や熱感が生じる)、血管透過性の亢進(血漿中の補体、抗体、凝固因子、キニンなどが、組織に漏出して、腫脹・浮腫や疼痛が生じる)、食細胞の遊走
・浸潤(好中球、次いで、単球/マクロファージが、病巣に浸潤する)が、起こる。
ブラジキニン(
BK)は、血管透過性亢進作用(ヒスタミンの15倍)があり、組織を腫脹させ、浮腫を生じさせ、疼痛を来たさせる。
PGE
2は、細動脈を拡張させ、局所の血流を増加させ、発赤や熱感を来たさせ、ブラジキニンによる疼痛(発痛)を、増強させる。
自己免疫疾患、アレルギー性疾患では、抗炎症薬(NSAIDsなど)で、炎症を抑制することが、生体の損傷を防ぎ、痛みを軽減するために必要。
しかし、感染症では、抗炎症薬(NSAIDsなど)で、炎症を抑制すると、例えば、PGE2の産生が抑制され、解熱することで、ウイルスなど病原体の増殖を促進し、治癒を送らせてしまう危険性がある。 また、抗炎症薬(NSAIDsなど)は、抗炎症作用もあるPGE2の産生を抑制し、T細胞からのインターロイキン-2(IL-2)やインターフェロン-γ(IFN-γ)の産生などを増加させ、強い免疫的炎症反応を起し、組織損傷を増加させる危険もある。また、抗炎症薬(NSAIDsなど)は、LTC4、D4、E4の産生を増加させ、気管支喘息の発作を増悪させる危険もある。
血液凝固と炎症との間には、関連がある。
炎症を促進する因子と、炎症を抑制する因子がある。
1.炎症の四徴
Calor(heat:熱感)、Rubor(redness:発赤)、Dolor(pain:疼痛)、Tumor(swelling:腫脹)を炎症の四徴と呼ぶ。
炎症の初期段階では、� �ず、ヒスタミンやセロトニンが、肥満細胞と血小板から放出される。ヒスタミンやセロトニンは、短時間に、一過性に血管を収縮させる。続いて、炎症局所(細動脈、細静脈、および、毛細血管)の血管を拡張させ、血流を増加させ、熱感や発赤が生じる。
また、血管透過性を亢進させ(血管内皮細胞のアクチンが収縮する)、血管内皮細胞の隙間が広がって、全身(血液中)から、白血球(好中球が主:注1)を、局所に浸出させ、血漿などの防御因子を、局所に漏出させ(注2)、腫脹(浮腫)が生じる(注3)。
血管内皮細胞の破壊に伴ない、血液凝固の第XII因子が活性化され、カリクレイン・キニン系で、ブラジキニン(BK)が産生され、血管透過性が亢進したり、疼痛が生じる。
単� ��・マクロファージからは、ブラジキニンの発痛作用を増強する、PGE2が産生され、疼痛が増強される。
生体は、カゼなどで、体内に炎症が起きた時に、血液凝固を促進させ、血管内を閉塞させ、局所の酸素濃度を低下させ、病原体の増殖を抑制したり、全身に拡散しようとする病原体を、局所に隔離しようとする。また、毒素などが全身に拡散しないようにする。
なお、発熱は、内因性発熱物質(endogenous pyrogen:EP)であるIL-1、TNF−α、IL-6、IFN-γにより、視床下部の血管内皮細胞が、PGE2を産生し、起こる。
2.炎症時に「痛み」を感じることは、合目的的である
・痛みは、体に異常があることを警告する。 ・痛みを避けることで、安静を保ち、病変部から病原体が、全身に広がるのを予防する。ただし、痛みのため、全く、局所を動かさないと、血流が悪くなり、発痛物質が除去されないので、痛みが増悪して、痛みの悪循環が起こり、また、局所の筋力などが低下する。痛みで、不安を感じたりすると、疼痛閾値が低下して、弱い痛みも、強い痛みとして感ずるようになる。
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